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02-01


02-01   カラクサタウン




太陽が西に傾き、空が橙色のグラデーションをつくり
映し出す町並みを光の世界に導いていた
 
カラクサタウン
 
夕方特有のどことなく懐かしい雰囲気を漂わせていた

ツタージャのアルグレイとヨーテリーのダージリンをボールに戻し町のゲートをくぐった
自分がいくつだったかわからないが、随分前に来たことがある
 
小さな町だけど、人は活気づいて見える

町並み見学と行きたいところだけどポケモンを休めることが優先
とりあえず、ポケモンセンターを目指した
 
全く知らない町ではないがちょっと覚えてない
奥底にしまった記憶を頼って道を探る
小路をいくつか抜け開けたところで広場に出れた
どうやら、記憶はほとんど覚えておらず、曖昧すぎたようだ

広場の少し先、視界の真ん中にはポケモンセンターが姿を現してくれた
俺は迷わずセンターに駆けよった
 
なんとなく、だけど何故か安心できる
そんな空間なポケモンセンター
今日はとりあえずここで一泊

受け付けでポケモンの回復と宿泊の手続きを行う
今日という日が終わりかけてるこを実感した
 









「お預かりしたポケモンはみんな元気になりましたよ」
「ありがとうございます」
 
戻されたモンスターボールを二つ、ボールホルダーに取り付ける

「新米トレーナーさんでしょ?」
 
受け付けのジョーイさんが微笑む

「はい」
「無理、させちゃダメよ」
「…俺、ポケモンに無理させてましたか…?」
 
ジョーイさんの言葉に少しドキッとした
 
「ふふっアナタは大丈夫よ、でも新米トレーナーさんには多いの、ポケモンに無理させちゃう人が…トレーナーはポケモンに守ってもらえてると同時にポケモンを守ることをしなきゃいけないこと、忘れないでね」
 
ポケモンに守られ
ポケモンを守る

確かに当たり前なようで、忘れてしまいそうな話
 
「大変なことがあっても、ポケモンと一緒にがんばってね」
 
にこり、と微笑まれた

「はい」
 
少しだけ、何かを学んだ気分
窓の外は先程よりも濃く橙色に染まり暖かな光を纏っていた



預かっているポケモンセンターの部屋の鍵をかけた時、ちょうど声をかけられた

よく知った声で

「ブラック!着いてたんだな」
 
チェレンだ
 
「チェレン!ああ、さっき着いたんだ」
 
そうか、と言うチェレンは一休みという雰囲気ではない
むしろ今からどこかに向かうという格好だ
 
「チェレン、どこか行くのか?」
「まあね、今から歩いたら次のサンヨウシティに着くからね、ちょっと遅い時間になるだろうけど、ブラックは?」
「俺はここで一泊するよ」
 
チェレンのように先に進みたいという、はやる気持ちもあるが
どうせなら、のんびりしたいしなんて、ぼんやり思った
あまり急いだり、慌ただしくしたりするのは好きでもないしね
 
それじゃ、ぼくはもう行くよ
 
と先を行くチェレンの姿を無言で見送り、俺も旅仕度を整えるために
センターの中に並列するショップに赴いた
 



傷薬がいくつかと、状態異常を治すための薬を数種類を買い込む
必需品だし、常備品でもあるそれらをバッグに入れた

少し重みが増したバッグにトレーナーとしての実感が湧いて、少し気合が入る
 
さて、これでやっと町並み見学が出来る、と夕暮れがかった外に出た

ガラス製のドアに夕日が反射し思わず目を細めた
閉まるドアの機械音を背中で聞き、一歩踏み出すが、なんだか町が騒がしくなっているようで…
人の流れは一方で広場の方に流れゆく

 
広場で何かあるらしい
 
はやく はやく
 
何が始まるんだ?
 

ざわめく雑音の中から、いくつかの声を拾う
広場で何があるのか、たいして興味はないのだが雑音に取り残された空気が煮え切らないのももどかしく
俺は広場へと歩みを進めた
 
沈みかけた夕日が照らす
 
吹き付ける風が冷たくて全身がゾッと粟立つ

焦燥感に駆られた気分



何が…?
 

俺をそんな気分にするのかわからないが
ただ、何が起きるのかを確かめたかった
 
人込みで広場の中央は見えない
でも、行かなきゃ!と踏み込んだとき 突然、手首を掴まれた
 
「…ブラック、こっち」
「え?」
 
手首を掴んだ声の主はチェレンだった
 
「先に行くんじゃなかったのか?」
「もちろん、そのつもりさ…でも広場が騒がしかったから気になってね」

君もだろ?
 
とチェレンは俺の手を掴んで引っ張り、人混みの最前列に連れて来た
 
「広場の様子が違うからさ、何事かと思ってね」
 
確かに、広場は先程と違いグリーンの部分には
いくつかのシンボルフラッグが掲げられ、同じ服装、同じ髪型をした人達が列んでいた
 
強い風に煽られフラッグが靡く

 鮮やかな青に蛍光色のアイスブルーが象徴的なフラッグ
目を凝らせば “PLASMA”の文字揺れ靡く

フラッグは夕日の橙色に映され不鮮明だった
 
そのフラッグに沿って列ぶ同じ格好の人達は微動すらせずに
ただじっと一点を見つめている




なんか、機械的だ
 
とチェレンに零した
 
「なぁ、何が始まるんだ?」
「ぼくも知らないんだ、ただあんまりいい雰囲気じゃないのは確かだよね」
 
チェレンに耳打ち
小声で会話をしていると周囲のざわめきが消えた


 

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