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01-01


01-01   寝癖。



今日に限って最悪の目覚め
まさか、ベッドから落下して目覚めるだなんて

それに母さんも母さんだ

あら、今起きたの?だなんてそんな風に思うなら
はやくに起こしてくれたっていいじゃないか


自分のマグカップにお気に入りの紅茶アールグレイを注ぎながら
母さんに聞こえないように文句を呟く

しかも、髪の流れに背いた酷い跳ね上がりの寝癖

二、三度手櫛で撫でるが効果はいまひとつ
簡単に跳ね上がる

とりあえず諦め、母さんが焼いてくれたべーグルを片手に椅子に座った
アールグレイを一口、喉を潤したのと同時

玄関のドアが開いた


「おはよう!ブラック!!清々しい朝ね、気分はどうかしら?」
「アララギ博士…」

テンションが高いその女性はアララギ博士
ここ、カノコタウンでポケモン研究をしている博士だ

アララギ博士は何やら大きなラッピングされた箱を抱えていた

「なんて顔してるの!そんなんじゃパートナーになるポケモンに失礼よ」

アララギ博士はでかいラッピングボックスを俺の目の前に差し出してきた


そう、今日は俺とポケモンが旅立つ日なわけだ



俺は眠気で焦点の合わない目でアララギ博士とラッピングボックスを交互に見た

「博士、ブラックったらさっき起きたばかりなんですよ」

俺の顔をまじまじ覗き込む博士に母さんが余計な一言を足した

「もっとしゃきっとしなさい!!」

と博士に力強くデコピンをされ地味に痛かった


そのまま博士はラッピングボックスを俺の部屋に置いて帰ってしまった





べーグルをもそもそ食べながら新鮮なアールグレイを堪能する
しばらくはきっと新鮮な紅茶も飲めなくなるのだから
 
紅茶のベルガモットの香に包まれ、眠気眼をこすった
 
ふぁっ
 
と、欠伸をひとつ、まどろむ眠気にひかれつつも
跳ね上がった寝癖をなんとかすべく洗面台に向かった
 









寝癖だなんて!
 
鏡に写った自分に悪態をつきながら、あの手この手で寝癖と戦う
結局、髪を洗い直すのが手早かったわけで

その間、引っ切り無しにインターフォンが鳴っていた
 

「母さん、お客さん!」
 

あぁ返事がない
 
母さん、掃除機の音で俺の声もインターフォンすら聞こえてない
 仕方なく、俺はチャイムのしつこい来客を迎えに赴いた
 


「どちらさま?」
 
抑揚のない声で玄関を開くと
 
「どれくらい待ったと思ってるんだ」
 
と、幼なじみのチェレンが立っていた
 
「早起きだな、チェレンは」
「君が遅いんだよ、ブラック、もう9時をまわっている」
 
そういいながらツカツカと家の中に我が物顔で入ってきた
 



「ベルは?」
「まだ来てない」
「相変わらずだな」
「チェレンもな」
「どういうことだ?」
「そういう所、無駄に真面目で冷静な所」
「なるほど、そういうブラックも相変わらずだな?朝から何してたんだ、髪の毛濡れてるじゃないか」
「…寝癖」
「寝癖って…!ポケモンが貰える大事な日に寝過ごした上に寝癖なんて気にしているのかい!?ブラック!」
「んー…」

チェレンの言葉に曖昧な返事を返しながら
俺はドライヤーを吹かした

あまりチェレンに反論したって、チェレンの気をまくし立てる可能性の方が高い
それに、なにより会話がだんだん説教みたくなるのが長年の勘でわかる
そうなったら面倒すぎるから、あえて曖昧な返答をした
 




すっかり寝癖の直った髪の毛先にワックスを施し
お気に入りの帽子を浅めに被った

そんな自分を写してる鏡の端に落ち着かないチェレンがチラチラ写る
 
「…落ち着いたら?」
「そうしたいのは山々だけど落ち着かないよ!ポケモンに会いたい気持ちが高ぶってるんだから!」
「…ふーん」
 
いつも冷静だから、落ち着かないチェレンは珍しい
 
「ポケモンならその箱の中にいるんだし、開けたら?」
「そうはいかないよ、まだベルが来てないし」
 
なんだ結局いつものチェレンか、変なところ真面目
わざわざベルを待つのがいかにもチェレンらしい

「そういうブラックは何でそんなに無関心なんだ?」
「そういうわけじゃ…」
 
全くの無関心なわけじゃない
むしろ、俺だって早くポケモンに会いたいし内心そわそわしてるわけだが
表情、態度にあらわれないらしい
それにベルが遅いのもいつものことだし、仕方ないと諦めてるってのが現状
 
そんな会話をしていたら下の階からド派手に玄関の開く音がした
そしてバタバタと階段を駆ける音が近くなり
 

バン!!
 

と派手な音で俺の部屋のドアが開いた

そしてベルが勢いよく転がり込んだ
 
「え えへへ…遅れちゃった…!!」
 

「ベル!君って人は…」
 
隣でチェレンが大きな溜息をついた


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