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01-06



01-06   二匹目





1番道路をすぎればカラクサタウン
 
とりあえず今日はカラクサタウンで一泊しようと
タウンマップを広げて一休み
 
どれだけ、のんびり歩いても夕方までにはカラクサタウンに着くはず
けど、ちょっとのんびりしすぎたかも
 
太陽はやや西向
まっすぐ歩けば少し時間がかかる
逸れた横道を通ればカラクサへの近道
 
どうするか、と道と地図を交互に眺め、隣で立っているツタージャのアルグレイを見た
 
大きな真っすぐな瞳で草むらの横道を見つめていた
 
「…行ってみるか?あっち」
 
するとアルグレイは頷いた
草むらには当然野生のポケモンがたくさんいるわけで、本来ならば避けるところだが
自分は、今は、もうポケモントレーナー
それにアルグレイもいるし、心強い
 
「日が傾く前に行こうか」
 
どっちの道に行くにしても歩き出さないことには始まらない
 
俺とアルグレイは草むらを踏み締めた

草むらに入ってからアルグレイは何かを警戒してるみたいで
よくキョロキョロと回りを見ている
時折、ガサガサと木葉の揺れる音がすればアルグレイは身構え小さく鳴く


 
「アルグレイ?」
 

アルグレイが一点を見つめたまま動かない
 
何かいるのか…?

ざわざわと木々を揺らす風はほのかに冷たく感じた
俺はアルグレイが見つめる先の草むらに図鑑を向けた
図鑑が解析画面に切り替わる
 
しかし、それよりも速く草むらが動いた
 
「あれはっ……!!」

ヨーテリー
よく見かけるポピュラーなポケモンだ

随分前にヨーテリーはトレーナーには忠実だが、野生だと縄張り意識と警戒が強い
なんて聞いたことがあったような…
 
そんなこと思ってる合間にアルグレイにヨーテリーのたいあたりがヒットする
 
「アルグレイ!!」

後方に吹き飛ばされるアルグレイを庇い抱き留める

なんだ、コイツ
見た目の大きさなんかよりもずっとパワーがある
 
「アルグレイ!?…大丈夫か?」
 
アルグレイは腕の中で小さく頷いた
 
俺の腕をすり抜けアルグレイは体制を立て直した
アルグレイの顔つきが変わった
 
俺も帽子を被り直し体制をととのえる
 
「いくぞ、アルグレイ」
 
ヨーテリーと睨み合う
 
先に踏み込んだのは俺達だった

「アルグレイ、たいあたり!!」
 
今度はヨーテリーが吹き飛ばされる
体を反転させ着地したヨーテリーがたいあたりを仕掛けてくる
 
「たいあたりで迎え撃て!」
 
アルグレイとヨーテリーの体がぶつかり、衝撃波がおきる

周囲の草を巻き込み、木々を大きく揺らす
 
たいあたり同士でぶつかった体は
互いの力の方向へと押し合う が、幾分かアルグレイが押し負けている
 
「アルグレイっ…!」

アルグレイの瞳が歪んだ
それを合図にヨーテリーは咆哮を上げアルグレイを押し上げた
 
ざりざりっ………!!
 
と、砂煙を巻き上げアルグレイの足が滑る
 
なんとか、しなければ
 
初心者にして、トレーナー
トレーナーである以上、ポケモンには常に最良の指示を与えなければならない
 
なんとかし なけ れば…!

顔を歪ませ、全身の力を込め踏み止まるアルグレイを瞳に映し
俺は咄嗟に図鑑を開いた
 

今の…いまのアルグレイにできるの は …!
 
ある文字列が飛び込んできた
 
これだ…!!
 

「アルグレイ!体を捻って受け流せ!!」
 
俺の声に反応したアルグレイは体を左サイドに捻り、ヨーテリーのたいあたりから抜け出した
そして反発する力を無くしたヨーテリーは前のめりに体制を崩す
 
計算通り!
 
「アルグレイ、今だ!つるのムチ!!」
 
ほんの少しの間でアルグレイ自身成長していて、驚いた

アルグレイの新緑の体から伸びる
しなやかなワイヤープラントのムチがヨーテリーを捕らえた
 
今なら いける…!

すかさず、空の無機質な冷たさのモンスターボールを手にし、ロックを解除する
 
いけっ!
 
使い方なんて、知ってる知識の見様見真似
モンスターボールは俺の手から離れ、ヨーテリーにあたる
淡い光に包まれ ボールは地面で小さくうごめく
 
警戒は解けず、緊張が全身を駆ける
 







そよいでた風がとまった
 












カチッ
 
モンスターボールのロック音がした
 
「……あ…捕まえた…のか?」
 
足元に転がるボールを拾い上げた
はじめの無機質な冷たさよりも、やはりどことなく暖かいかんじ
 
いのち、がその中にいること
 
アルグレイが俺を見上げた
 
「アルグレイ、新しい仲間だ」
 
ヨーテリーのボールをアルグレイに差し出した
 
「ありがとう、アルグレイ」
 
キュイッと鳴いて尻尾が揺れた


「ヨーテリー、出てきなよ」

ボールからヨーテリーを出す

はじめまして、これから よろしく
出会った新しい仲間にふれた

やわらかな、あたたかい感触
全身を覆う体毛は上等な茶葉で淹れたミルクティーのよう


あぁ、そうだ 君にも
 
ヨーテリーの頭を撫でながら問いかけた
 
「…………ダージリンって呼んでもいいかい?」
 
返事は、
鳴き声ひとつと同時に俺に飛び付いてきた

なんとなく、たぶんだけど、
これは肯定なんだと、確信できた
 
飛び付かれ反転した俺の視界には
覗き込んでいるツタージャのアルグレイとヨーテリーのダージリン
そして空はほのかにオレンジがかっていた
 


カラクサまで走ろうか、
 
そういいながら両腕で二匹を抱きしめた

あたたかな鼓動がじんわり伝わって



少し、うれしくなった
 

 

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