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The Sky Wouldn't Stop Crying



sonic SS

The Sky Wouldn't Stop Crying
 
シャド→エミのお話。
さて、報われないのはお互いさま?







仕事帰りにたまたま通り掛かったステーションで
不機嫌そうに大粒の雨を見つめている桃色のハリネズミを見つけた
その近くに車を横付けし
「乗っていくか」と声をかけたら、
彼女から微笑みひとつと
「ありがとう」が返ってきた


大音量で聴いていた音楽もレベルを落とし自分なりに気をつかう
車内には控えめに流れるメタルにまじり雨音が響いていた
僕も彼女も無言のまま、車がハイウェイに差し掛かったとき
彼女が突然小さな静寂を静止した
 
「今日って七夕なのよ、シャドウ知ってた?織り姫と彦星が年に一度しか会えない日なのよ」
 
そう言いながら後部座席で彼女が窓に寄り掛かる様子をバックミラーで捉えた
 
「でもこの雨じゃ天の川見えないなぁ、二人とも今年は会えないのね」
 
あーあ と自分のことのように残念がる

「なぜ君が残念がる?」

そう問うと彼女は後部座席の間から身を乗り出してきた
 
「恋する乙女は恋する乙女の味方だからよ!好きで好きでまたらない相手と年に一度しか会えないのにその日だって雨でだいなしになっちゃうのよ?神様って意地悪!」

そこまで一気にまくし立てると彼女はまた座席に深く座りなおした
 
「でもぉ恋には試練が付き物よね!年に一度しか会えないなんてちょっとロマンチックで憧れちゃうかも」

一度スイッチの入った彼女が止まらないのは知っている
妄想に浸った彼女は後部座席に放っていたベロアのクッションに顔を埋めている
ハイウェイで速度の上がり続けている車に雨が強く叩きつけていた
雨足が強くなったようだ
 
「・・・では君が織り姫と同じ境遇ならばどうする?」
 
僕の言葉に驚いてクッションに埋めてた顔をカバッと上げた
ミラー越しにエメラルドの瞳とかち合った

「織り姫と同じ境遇?それって大好きな人に年に一度しか会えないってこと?そんなのありえない!!」
 
膝上に置いてたクッションに両手を叩きつけた

「もしもの話だ」
「確かにさっきそんなのロマンチック~とか言ったけどぉ・・・あたしソニックに年に一度しか会えないなんて生活無理よ!」
「・・・なぜだ?」
「だってソニックはあたしの全てだもの!あたしからソニックを取ったらハンマーしか残らないわよ」
 
僕は彼女の話を聞きながら車内に響く音楽の音量をわからないくらい上げた
雨のためあまりスピードが出せないハイウェイは非常に長く感じられた
 
「あたしが織り姫だったら待たないわ!年に一度会えたとしても・・・大好きな人となら毎日会いたいもの!!」
「ならば、どうする?」
「年に一度しか川が渡れないなら遠回りしてでも会いに行くわ!364日待って1日だけアイツから会いに来てくれたって、アイツは掴めないもの!ソニックは追いかけないと手に入らないんだから!!」
 
君が織り姫だったらと提案したが彼女の脳内では彦星はソニックだと勝手に変換されていた
チラリ、とミラーを盗み見ると桃色のハリネズミは少し寂しそうにニコリと笑った
 
「アイツが自分から振り向いてくれるまで、アイツから会いに来てくれるまで待とうって何度か思ったけど来てくれないもの・・・毎日会いたいけど会えないもの、だから追いかけるの」
 
そこまで言うと彼女は座席にポスっと体を預けた
 
「七夕、ロマンチックだけど織り姫も彦星も根性ないなぁ・・・待ってるだけじゃどうしようもないのに」

彼女はポツリと呟いて四角いクッションの角に額を押し付けた
静寂が再び訪れ、
車内には控えめに流れるメタルロックと車が跳ね上げる水音、雨音、
そして風をきる音が聞こえるだけ
相変わらず桃色のハリネズミはクッションに抱き着き埋まったまま動かない

もしかすると僕は彼女の気分を害したのではないだろうか、と見兼ね声をかけた

「・・・君は「シャドウは何か願いごとってある?」
 
・・・声をかけたが僕の声は彼女の言葉によって掻き消された
 
「願いごと・・・?」
「織り姫、彦星も七夕だけど星にお願いするのも七夕でしょ?シャドウは何をお願いするの?」
「僕・・・?」
「そう、あたしだったらぁ・・・やっぱりぃソニックとラブラブになれますようにかなぁ・・・うーんでもたくさんお願いしたいことあって迷っちゃう!シャドウは?」
 
好奇心に溢れたエメラルドの瞳がこちらをみていた
 
「・・・願いなど・・・ない、というより思い付かない」

そう答えると彼女はつまらなそうに口を尖らせた

「何よぉ究極生命体だから願いごとしなくても満ち足りてるってわけ?」
「別にそうは言ってない」
 
そんな会話を交わしているとハイウェイを抜けて、彼女を送り届けるポイント近くに来ていた
雨足はまだ強い
車を降りる彼女に自分が使ってた素っ気ない黒地の傘を差し出した
彼女は可愛くないと文句を言ったが僕が雨に濡れるよりかマシだと言うと大人しく傘を受け取った

「ねぇ、シャドウあなたが大切な人に年に一度しか会えなかったら・・・・ううん、今の質問は無しね!」

と首を傾げて苦笑した
 
「送ってくれてありがとね」
 
じゃあね、と彼女は僕に手を振り雨の街に消えていった
 
彼女のいなくなった車内は何となく静かで
控えめに流していた音楽を元の爆音に戻してみるが
先程、彼女の紡いだ言葉の数々ほど魅力はないことを感じた

雨足はまだいっそう強くなって車内の音楽に突き刺さる
 

(ねぇ、シャドウあなたが大切な人に年に一度しか会えなかったら)
 
彼女の去り際の言葉が蘇った

「・・・どうする、事など・・・」
 
僕の大切な人はずっと前に
そう、もう、一度も会えないのだから
大切なものはあの時掴み損ねたのだから
 
だけど今は
 
ゆっくり目を閉じる瞼に浮かぶは微笑むエメラルドの瞳の桃色のハリネズミ
それと碧い目をした金糸が揺れる少女の微笑みが重なった
 
どちらにせよ遠くにありすぎて掴めない
停車させた車を動かすのも億劫で忙しくワイパーが往来するフロントガラス越に空を見た

真っ暗な空とたたき付ける雨
星の一欠けらすら見えない真っ暗な涙の空





『シャドウ!アンタいつまで外ほっつき歩いてんの?早く帰って来なさいよ!大変なんだから』
 
よく知ったコウモリの声、突然の無線に僕の思考は引き戻された
 
雨の音と大音量の車内の音楽とで雑音が混じる
一息おいて

「今日は七夕らしいじゃないか」
 
ただ一言紡いだ

『・・・はぁ?アンタどうしたの?』
 「フン、別になんでもない・・・今からそっちに戻る」
 
一方的に無線を落とし空を見上げた
 


君の願い、







見えない星に願いを







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