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さびた きんぞく


ポケモンDP

さびた きんぞく

コウキの話。+ヒカリ。
ヒカリとジュンが殿堂入りしたことを知ったコウキ。
ちょっと暗いお話です。


ヒカリの名前がテレビに映ったのが2日前

そして今日
まさに今、僕は目を疑った
 
“シンオウポケモンリーグ制覇 フタバタウン ジュン”
 
リーグ制覇 、ヒカリならやりかねないと思ってた
でも、 まさか ジュンまで ・・・

無意識に手に持っていた書類を握り潰していた
 
おいていかれた気分がした

何で…何だろう

いくらナナカマド博士の助手でも、僕は彼らの先輩トレーナーだった
その辺のトレーナーよりも強かった…はずだった
 
いつからだ?
 
僕が君らにおいて行かれたのは
 
作業中のパソコンに、自分のポケモン図鑑のデータがケーブルでドッキングされ映し出されている
その横にはバッジケースとポケッチ
僕は握り潰したレポートをたたき付けるように机に置いておもむろにバッジケースを手にとった
 
僕だってバッジ何個かは持っている

しばらくぶりに触るバッジケースはひどく冷たく感じた
 
パカッ

と軽い音がしてケースが開いた
バッジは黒く酸化して金属独特の匂いがした
バッジを貰ったときの輝きは見る影もない
何で・・・?
僕にはバッジを貰ったときの事は最近の出来事だと感じていたけど
実際は僕が思ってたよりもたくさんの時間が過ぎていたんだ

バッジの黒さがそれを物語る
なんで
なんでなんで
なんで なんで なんで
 
時間までもが僕を取り残して

みんな
 みんな みんな
みんな みんな みんな

僕だけ…僕だけを僕だけおいていって…!!!!!
 






ガシャアァァァァン
 








静かだった研究所に鈍い金属音が響いた
と同時に研究所の扉が開いた
 
「な、何してるのコウキ君…?」
「ヒ…カリ…」
 
ヒカリの声で僕は我に返った
さっきの鈍い金属音はバッジの音だったようだ
床にはたたき付けられたケースと飛び散ったバッジが暗い影を落としていた
 
「な、何してるの…?ねぇ!?」

ヒカリの声は震えていた

「今バッジたたき付けた…?」
「そうなのかな?よく覚えてないよヒカリがやったんじゃないならたたき付けたのはきっと僕だよ …どうでもいいや、そんなこと」
 
何でこんなタイミングでヒカリが来たんだ?
あぁそうか、シンオウ図鑑完成したとか言ってたね
僕の図鑑はまだ……

黒い焦燥感が僕を襲う
 
「ヒカリはすごいよねチャンピオンになるし図鑑は完成させるし…!」
 
ぐっと僕は図鑑とパソコンを繋いでいるケーブルを握った
 
「ほんと…僕なんか…!!」
 
その言葉と同時にケーブルを引き抜いた
バチバチと少量の火花が弾けて図鑑とパソコンのシステムがダウンした
僕の行動に驚くヒカリが目の端に映る
 
「どう、したの…!」
 
ヒカリは動揺しながらも散らばった僕のバッジを拾い始めた


……やめて

やめて やめて やめて

「拾うなよ!!!もう…いいんだ!」
 
気が付くと僕はヒカリの手からバッジを叩き飛ばしていた
 



キィン キィン―…
 

とバッジが床に落ちた

「…何で?」

ヒカリは哀しそうな顔して僕をみた

「もう…そんなものはいらないみんな…みんながどんどん遠くなってそのジムバッジだって真っ黒で、僕みたいに時間に置き去りにされたんだ」
 「…」
「みんな…おいて行くんだそう…だろ?きっと僕は追いつけない……」
「違う!違うよ!!」
「違わないよ!なら、何でみんな前に進んで行くんだよ!!?」
「コウキ君、違う!」
「じゃあ、何で!?そうか…なら …僕のポケモンが弱いん…」

バシィィィィィ
 
一瞬何が起きたかわからなかった
左の頬が熱を帯びて、痛い

ヒカリが僕の頬を叩いたんだ
 
「コウキ!!」
 
初めて呼び捨てで呼ばれた

「コウキ…今何言おうとしたかわかってる…!?」

「あ、」
 
僕のポケモンが弱い

それは 決して言ってはいけないこと
決して思ってはいけないこと、決して……

「あぁ…」
「トレーナーとして一番口に出してはならないこと…でしょ」

哀しそうな目で僕を見ている
 
「弱いのはコウキ君の気持ちだよ」
 
ヒカリに返す言葉がない
僕のまわりだけ空気が止まった
ヒカリはまた床に落ちたバッジを拾い始めた
 
「いらない…なんて言わないでどんなに時が経ってもどんなに黒くなってもこのバッジは」

そこまで言うとヒカリは僕の手に拾い集めたバッジとケースを置いた
 
「コウキ君のポケモンが、大好きなコウキ君のために頑張った証なんだよ」
 
その時、僕の体に潜んでいた黒い熱が 冷めていった
 
「あ……」
 
言葉にならない感情が込み上げてきて
僕はドダイトスの入ったモンスターボールを抱きしめ座り込んでいた

ただ
 
ごめん

と繰り返し呟くことしか出来なくて
 
「僕は…」
「コウキ君、自分がおいて行かれたなんて思わないで」
 
からっぽな僕にヒカリの声が響いた
 
「わたしやジュンはリーグ制覇できてもコウキ君みたいにポケモン研究の知識がない、わたし達に出来ないことがコウキ君には出来る …胸張って自分にしか出来ないもの追い求めるの、わたしはカッコイイと思う」
 
ヒカリは僕に手を差し出した
 
「笑ってよ コウキ君いつまでもそんな顔しないで」
 
そう言いながら僕の手をぐいっと引っ張った
幼さの残る 僕とかわらないほどの小さなチャンピオンがとても強く、大きくみえた
 


今日の出来事は
前だけ見つめてるつもりだった閉塞的な世界に引きこもってた自分への代償
みんなと一緒じゃなくていい
僕は僕だけにしかできないことが―…


「ありがとう、ヒカリ」
「やっと笑った …もう、こんなことしないでね」
 
と僕の手をとってバッジケースを握らせた
 










ヒカリは完成した図鑑を博士に見せに来たけど、あいにく今日は博士も父さんたちも調査で留守
ヒカリはまた来るって
 

「ヒカリ、今度はどこ行くの」
「キッサキの港にジュンが来いって」
 
ジュン、流石というか呆れるぐらいの行動力じっとなんかしていないってことか

じゃぁね 頑張ってね

ってヒカリは北の空に飛んで行った

空が眩しかった
もう焦らない、僕には僕の僕しか進めない道がきっと
 

「ねぇ、ドダイトスもう一度やってくれるかい?」
 
僕と一緒に 僕はパートナーの入ったモンスターボールをそっと抱いた
 
黒いバッジ、磨いて輝かせて

そのバッジは僕のために頑張ってくれた友達の強さの証

埋まってない図鑑のページはこれから出会う大切な時間


僕は またここから始める


風は追い風

きっと今度は大丈夫











バッジはポケモンが君のために頑張った証
昔、アニメでカンナさんがサトシに言ってたのを思い出して、執筆。


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