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夕焼けこやけの闇ひとつ


稲妻11 雷門中

夕焼けこやけの闇ひとつ

半田の話。
レギュラー落ちしてベンチになった半田の話。
ちょっと病んでる系。嘔吐表現があるので注意。



日が落ちるのも遅くなって
部活が終わる時間だってのにまだ明るい
 
夕日の紅蓮が目に滲みて

蒸し暑い、湿気をおびた空気が息苦しい
 
この間の蘇った天才?
トライペガサスの一件から一之瀬が入部
 
その時は何も思ってなかったけど
 
あぁそうか
そういうことか
 
今日、改めそれがわかった


いつも使ってる古びたホワイトボードから俺の名前が消えていて

一之瀬 の名前
 
当然、彼は強い彼のプレーは世界に通じるものなのだから
 
「各自、フォーメーションの確認を頼む」

と帰りがけ、個別に鬼道から手渡された資料は明らかに以前よりも薄くなっていた
 
「ああ、わかったよ」
 
なんて返したけど
自分の手が震えるのを堪えるのでいっぱいだった

「半田さん、駅前でアイス食べて行きません?」
「今日は暑いから特別おいしいですよ!」

とか宍戸や少林に言われたけど
残念ながらそんな気分じゃない

「すまん、今日は勘弁な」
 
と一言返して逃げた

あいつらは追ってこないが
真っ赤な夕日が追いかけてくる
 
蒸し暑い、暑い、あつい
追い付かれそうだから走った
 
それはフィールドを走るよりも
ずっと苦しくて、痛くて、 泣きたくなった
 
まだぬかるみの残る河川敷の畦道の泥が足に絡みついてきて
 
怖い
息が、きれて、くる、し い
 

脈拍が異常だと思う

血の流動しか聞こえない

痛い、いたい、
止まりたい

ダメだ、動かないと

心臓がとまりそう
 

あぁ
 
眼下、には 河川敷グランド
そして おいてきぼりのサッカーボール


カッコワルイ

みっともない、 ・・・どうして?

自分を見てるみたいで?
 
だから そいつを渾身の力で蹴ってやった
壁に向かって
 

何度も
何度も、何度も、何度も、
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、
何度も、何度も、
何度も、何度も、何度も、何度も何度も、
 
何度、も

夕日が真っ赤に照り付けて
こめかみから頬に汗が伝う
べとついたジャージが張り付いて それで、空気は蒸し暑くて
滴る汗で地面が濡れて
心臓が痛くて、痛くて、痛い
 
怖い

そして

カッコワルイ


と、同時下腹部に激痛

跳ね返り 落下するモノクロの球体
少し遅れて 地面にひざまずく俺
 
ぱらぱらと回りに散った水滴はまるで雨のよう
 
すでに自分の顔を伝うのは汗か涙か、わからない
 
それから思考停止

内臓がえぐられた痛み
破裂した?

全身から伝う汗
張り付いた服、乱れた呼吸、素肌に纏わり付いた砂
痛くてバラバラで止まりそうな、心臓

ひどく赤い夕日の照り返し
蒸し暑い、暑い、暑い
気持ち悪い

あぁっ、くそっ カッコワルイ!!!!

爪が地面を引っ掻いた


 「う゛っえぇぇっ」
 
吐瀉、
 
「かはっ」
 
胃酸のにおい

地面と口を繋ぐ銀の糸は
色香なんて程遠い

不 快
 
置いていかれるのか?
このモノクロの球体みたいに?

今の、俺、 カッコワルイ


今、初めて感じた欲望

「チカラが欲しい」
 

その時頬を伝ったのは確かに涙だった
 




認めたくなかったんだ
彼の強さ、
じゃなくて俺の弱さを



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