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鮮やかすぎた悪夢


稲妻11 帝国学園

鮮やかすぎた悪夢

真・帝国学園の試合後直後
入院中の源田と辺見の話
暗めの話です。




鼻を掠めるアルコールの匂い
幾重にもぼやけた視界
薄暗い照明
小さく開いた窓からは、風はなく静か
 

止まりかけていた思考を
瞬きを二度三度繰り返し引き戻す

頭上に目線を動かせば規則正しく滴り落ちる点滴

そうだ、病院
 
掠れた咽にすぅ…と空気を取り込んだ

そして傍で座る人影と目が合った
 
「よう…目、覚めたか?」
「…辺見?」
 
どうしてお前がここに?
みんなはどうした?
佐久間は無事なのか?
真・帝国学園は?
不動は?
影山は?
鬼道は?
 
聞きたいことは山ほどあった
けれど安堵に満ちた顔で
 
「無茶しやがって」
 
と呟かれたら俺の口からは謝罪の言葉しか紡げなかった
 
「すまない…」
 
そんな小さな空気の振動ですら、今の自分には全身に突き刺さる鈍い痛みになる
 
「…謝るなよ、佐久間は別室だ、それから他の帝国のみんなも来ているけど、仮眠してる、朝になったら俺と寺門で交代するからな」
 
心の中を見透かされたようで少し恥ずかしかった
 
「…そうか」
 
短く返して唇を噛んだ、自分が情けない
 
「…誰も、お前らのこと憎んだり、嫌ったりなんかしてねぇよ」
 
そんな俺の心情を知ってか知らずか
辺見はそう言いながら椅子に座り直した
 


「…敗北が悔しかった」

気が付いたら俺は言葉を零していた
 
「悔しくて、強くなりたかった、」
「うん」
「みんなで、また」
「…」
「けれど、鬼道は」
「雷門に行っちまった」
「裏切られた、なんて思った」
「……」
「鬼道は勝利だけを掴みに行ったのだと」
「……」
「鬼道の本心を、あの時俺は気付けなかった」
「…」
「耐え難い痛みを怒りに変えて、道が見えなくなった」
「……」
 
そこまで呟くように吐き捨てる
俺も辺見も何も言わないままで、ただ空気の流れる微かな音が耳に響いた

視界にはぼうっと 薄い光りのライトが見える病院の天井

今の俺には眩しいくらいだ

焼けるような痛みが走る自分の両腕をぐっと天井にのばした
 
「…っ!!!!」
 
「馬鹿っ!お前動いたら…!!」
辺見が慌てて止めようとするが構わず腕をのばした
 
例えようのない激痛
身体の芯に突き刺さる痛み
 
たまらなく、悔しい一時の感情に駆り立てられた自分が

「…得たものは」
 
悔やむ、闇が言葉になって出てきた
 
「源田?」
「痛み、絶望、裏切り」
「……」
「偽りの、力」
 
天井を睨み、再び唇を噛み締める
 

「………馬鹿、野郎…」

辺見の震えた声が聞こえ、のばした俺の手を辺見の手がやさしく包み下へと下ろした
 
「…もう、しゃべるな」
「辺見…?」
 



俺の手を包んでた辺見の手に力がこもった
 
「…お前の守るゴールは、帝国だろ」
「…辺、見」
「俺達は、帝国イレブンは、お前がいるから、走れんだ」
「……」
「源田、」
「…?」
「俺達は、待ってる」
 
俺の手を握る辺見の手がいっそう強くなる
 
「また、サッカーしようぜ」
 


あぁ、そうだ俺は何を…
あの時、みんなと誓ったじゃないか

…俺達のサッカーを…
 
「…すまなかった」
「帝国サッカーはまだ終わってない、だろ?」
 
笑う辺見の顔につられて俺の口元も緩む
 
「そうだったな」
 
目頭が熱くなる

初めから俺のフィールドはここにあったのだ
 



「ありがとう」
 

最後に呟いて瞼を閉じた
 












翌朝、やわらかな朝焼けに目を覚ます
どうやらそのまま寝てしまったらしい

俺の手は辺見に握られたままで
握られてた方の俺の手から不思議と痛みが消えていた



ありがとう 救いを差し延べた友人たちへ







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真・帝国の後、呪縛から解き放つのは仲間の気持ち
仲間思いな辺見さんが書きたかった




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