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01-02


01-02    魅了



「あのう、ごめんね…また 遅くなっちゃった……」
 
こけたままの体制でしゅんとなったベルは申し訳なさそうに謝罪を述べた
まぁ 確かにベルは遅刻したのだが
今日は俺だって寝過ごしてるわけでベルのことをとやかく言えた立場ではない
しかしながらチェレンは多少なりご立腹のようで
 
「ねぇ、ベル…君がマイペースなのは10年程前から知っているけど、今日は特別な日、アララギ博士からポケモンが貰える日なんだよ?」
 
と、若干刺のある口調でベルに訴えたが、マイペースなベルにはそんな苛立ちなんて届かない
相変わらずのベルはのんびりとした口調でやんわりと返事をした
 
「はーい、ごめんなさい ブラック、チェレン」
 
この様子じゃ反省はしてないだろう
というか、いつものことだし、それがベルらしいんだけど
 
「さぁ、三人そろったし、そろそろポケモンとご対面といこうよ」
「あたしも!はやくポケモンに会いたいな!!」
 
二人の顔がなんだかキラキラして見える
ベルはともかく、チェレンもこんな顔するもんだと少し驚いた

「ブラックの家に届いたんだし、1番最初に選ぶのはブラックからだよね?」
「…え?俺?」
 
俺よりもチェレンやベルの方が幾分かポケモンを楽しみにしていたはずだ
特にチェレン、落ち着かないほど楽しみにしてたのに
良いのだろうか、とチェレンに横目で問いかけた
 
「ブラックの家に届いたんだ、君が1番に選ぶのが理にかなってる」
「…そんなもん?」
 
ああ、とチェレンは頷いた
ちょっと予想外
でも嬉しい一番乗りをいただけたのだから、その言葉に甘えることにした

「その箱、に入ってるんだろ?ブラック、早く開けてみようよ」
「あぁ、それじゃあ…」
 
俺はゆっくりとリボンに手をかけた
いたって普通のリボンだけど、それは空気のようにやわらかで、砂糖菓子のように甘い感覚

なんだろう
 
もっと俺が小さかった頃、初めて星空が綺麗だと思った時の感覚にそっくりだ
 
箱の蓋を開けるのは、知らない世界を描いた絵本を読む感覚
 
ありとあらゆる感覚が、五感が、この瞬間を待ってたみたいで
自分が感じてたよりも、この瞬間を待ち望んでいたことに驚く
 

「…アララギ博士からの手紙が入ってる」
 
三つのモンスターボールの間にお洒落なカードに書かれたアララギ博士からの手紙
俺がそれを手に取るとチェレンが覗き込んで読み上げた
 
「『この手紙と一緒に三匹のポケモンを届けます。ブラック、チェレン、ベルの三人で仲良く選んでね それではよろしく…アララギ』だって…言われなくとも」

チェレンに肩を軽く押されポケモンを選ぶよう、促された
 
三つのモンスターボール中にはそれぞれ各一匹ずつポケモンが収められている
 


どれにしよう…


俺の記念すべき、最初のポケモン
それぞれが俺の顔を見上げていた

ほのおタイプのポカブ…
みずタイプのミジュマル……
それから くさタイプのツタージャ………


俺がツタージャを見つめたとき
ツタージャはゆっくりと瞬きをした

その動作はポケモンといえど 非常に美しくて
 
ゆっくり開かれた瞳は澄んだ茶色が輝いて

そう、今朝飲んだアールグレイのよう

そして全身の新緑色は
まだ摘まれてない茶葉のようで…………



完全に魅せられた
 


甘く痺れる感覚を携えた俺の指先は、ゆっくりとツタージャのモンスターボールに近付く
 

はじめまして
 

そんな気持ちを纏って、モンスターボールに触れた
 

無機質な丸い球体
機械的な冷たさを放つモンスターボールだが
触れた瞬間なんだか微かに温かい
 
その中に確かな生命がいることを実感した
 

「…俺はツタージャにする」
 
今、この瞬間から俺はトレーナー
 

「ブラックはツタージャだね!じゃあ、あたしはミジュマル!ねぇ チェレンはポカブでいいよね?」

俺がツタージャに決めるとベルがミジュマルの入ったモンスターボールを手に取った

「なんでベルが、ぼくのポケモンを決めるのさ…まぁぼくは初めからポカブのつもりだったけど」
 
みんな、それぞれ今日からのパートナー

この時をどれほど待ち望んだだろうか
 

「みんな自分のポケモン、選んだよね」

ベルが口を開いた
 
「だったら!ポケモン勝負してみようよ!!」

ベルの提案、だけどチェレンが直ぐさま反論を返した
 
「ベル!まだ弱いポケモンとはいえ、室内で勝負はダメだよ!!」
「えー!大丈夫だよぉ!このコ達まだ弱いんでしょ?だったら戦わせて育てなきゃ!!」
 
ね?っとベルは俺の方をみた

「ブラック!行くよぉ!!」
 
ベルの掛け声とともにモンスターボールが投げられた




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